先日馴染みの洋紙屋さんから、「全ての製紙会社が2月から板紙を除き全品一律用紙単価を25円値上げ」との電話があった。用紙単価とはキロあたりの価格を指す。本の売れない時代にこの値上げは痛い。
その上、結局は読者へ回るわけだから、本の価格上昇による本離れと危惧される。文庫の新刊が1,000円以上が普通ってどうなんだろう?
先ほど本屋のホームページを見てると、“用途別に紙を徹底大紹介”との本がベストセラーに入ってた。本に限っていえば用途別といっても特殊な紙はせいぜい見返しか表紙で、実際の用紙選択の余地はそれほど無い。仕事場の本棚に目をやれば、洋紙の見本帳がズラッと並んではいるが、廃紙になった用紙のなんと多いことか。
用紙は単純に①読み物 上質紙。クリーム系②写真・画集など色諧調重視 コート紙かアート紙。マット系。でよいと思う。
当たり前のことだが、本は読むため見るための印刷物である。印刷適正を無視した選択はありえない。そして次はコスト。高級写真集や画集は定価も相当に高いが用紙だって同様に高価で、現在は注文生産だったりする。
で、最初の話である。用紙25円の値上がりはバカにできない。大ごとだ!
まず見本帳を見る。捲るとたくさんの銘柄がパラパラ製本されている。各銘柄には仕様が表記されている。例えばこうだ。
銘柄 ⚫️⚫️ 46/Y 56K。46判/横目。46版 横目 56キロと読む。この銘柄は他に66キロ、75キロが用意され、用紙単価は205円。
本の仕様を、ソフトカバー 四六版 240頁。自費出版を1,000部、商業出版を5,000部と設定。本文用紙の必要実数はそれぞれ4,000枚 19,000枚となる(※本文用紙は大概1,000枚単位で販売される)。 それぞれのキロ数でコスト計算すると、
銘柄 値段(1,000部) 値段(5,000部) 束(本の厚さ)
⚫️46/Y 56K 45,920円 218,120円(税抜) 約14ミリ
⚫️46/Y 66K 54,120円 257,070円(税抜) 約16.5ミリ
⚫️46/Y 75K 61,500円 292,125円(税抜) 約19ミリ
(※束にはカバー、表紙の厚みは含みません)
普通に選ぶなら56キロ。束を出したいならせいぜい66キロだろう。版元が束を出したい理由は①ページ数が少ない又は②本をぶ厚く見せたい。いずれも定価に見合った本の見栄えが欲しいからだ。
ここで示したコストは本文用紙のみで、当然表紙、カバーなど他の用紙も本には必要となってくる。くれぐれもお忘れなきよう。
本作りが初めてな方の多い自費出版者であれば、尚更ムダなコストは注意して欲しい。業者さんとよく相談し、良い本を良いコストで制作していただきたいと思います。
https://sankyobooks.jp/sankyo/index.html